風を室内に取り入れる場合、取り入れ側に開くだけでなくその吹き抜けていく経路や最終的にどの辺りから風を抜くかという事が大切になります。
各部屋の入口を引戸にして夏場は開け放しにもできるようにしたり、欄間をオープンにする事で部屋から部屋へと風が抜けるように計画していきます。
視線も同様で、空間から別の空間へと抜けるよう工夫する事で、実際の広さ以上に広がりのある住まいを生み出します。
私共は風の通り道やそこから見える景色や周りの空間にも配慮し、設計を行います。
建物はそれ単体でこの世の中に存在しているわけではありません。風土はもちろんの事、町並みや隣家といった「外」と密接に関連しあって存在しています。敷地の状況を見極め、間取りや各部屋の繋がり、法規制といった条件を満たしながら、「内」と「外」の関係を読み取っていくことが住まいの設計を考える上では大切なことです。
・各部屋をどのように配置し、何を見るようにすればいいのか?
・夏には風を通し、逆に冬には風を防ぐには、どの方向に窓を開ければいいのか?
・どこにどんな樹木を植えればいいのか?
これらに対応すべく、アメダスデータや風土の建築に学び、これまでの経験値を駆使して周囲の街並みの中での住まいの配置をご提案いたします。
世界最古の木造建築法隆寺に代表されるように、日本の木材を生かした伝統工法は、今もなお生き続けています。住宅を長持ちさせるという事だけを考えるのであれば、従来の工法を活用すれば良いというのは実際に証明されていることなのですが、昔の家は決して住みやすい家では有りません。
寒い冬に風がヒューヒュー通り抜けたら過ごせませんよね。
暑い夏、エアコンを使っているのに冷たい空気が家のあちこちから抜け出したら意味が無いですよね。
現代における住宅を考えた場合、従来の木造工法に加え、そうした寒暖に対応した家づくりを行わなくてはいけません。ですから高気密高断熱の住宅は今や当たり前の考え方です。
ただ、人間の住み心地だけを考えた家は、木にとっての良い家ではなくなることもしばしば。
しかし、人にとっての良い家、かつ木にも良い家こそがエアサイクルの家なのです。
エアサイクルの家では、外張り断熱を施し、ベースとなる高気密高断熱の状態を作り上げます。
そして、その断熱材と外壁の間に空気の層を作ります。その空気の層が外気温と室内の温度差を調整します。冬は外気を遮断する事で、空気の層がコートの役割をしてくれます。夏はその空気の層を循環させる事で暑さをやわらげます。つまり、空気のコートを脱ぐのです。
ですから、エアサイクルの家とは、夏と冬とで衣替えをする家なのです。
太陽の熱と自然の風を利用するシステムなのでランニングコストもゼロ、システムの老朽もありません。
一年に2回スイッチの操作をして家の冬支度、夏支度をするだけです。
窓の開閉により空気の通り道を作ってあげれば、家が太陽の熱と風を利用して自然に衣替えをしてくれるのです。
何が優れているというのは一概に言いにくいですが、エアサイクルの良さはお伝えできます。
エアサイクル工法で建てた家は、住宅に無理をさせることなく、材料の木を最良の状態で維持できるため、木材の老朽を防ぎ、シロアリの攻撃からも自衛できるのです。結果として薬剤処理も不要、空気の状態も整い家自身の寿命も飛躍的に向上します。要は資産価値の高い家ができるというわけです。
住む人にとっても、光熱費の削減、メンテナンス費用の削減、健康を害する心配もなく安心して暮らせる家になります。
エアサイクル工法の集大成と言えるのが、このダイヤカットの壁ボード。
ダイヤ型にカットされた溝が空気の通り道となり、夏は涼しく、冬は暖かい状態をつくりあげます。